About MODE

経緯と狙い

船による海上物流は世界の約80%、日本の99%以上の貨物を運ぶ社会基盤として人々の生活、経済、社会活動を支えています。日本の海事産業は、「世界の脱炭素化の潮流の中での新たな技術開発とその社会実装」、「海運サービス維持のための安全性向上と働き方改革のための自動運航船の導入」、「高度化する船舶の設計・製造プロセスにおける圧倒的な生産性確保」といった解決すべき課題を抱えています。

これらの課題に取り組むための有効な手段として期待されるのが、自動車産業で導入が進むモデルベース開発(MBD、注2)とモデルベース・システムズエンジニアリング(MBSE、注3)です。MBDでは製品やそれを構成する要素の機能をコンピューター上のモデルとして表現し、シミュレーションによって動作を確認するアプローチを取ります。MBDにより、船舶に新しい要素技術を採用する効果について、実運航を想定したシミュレーションの中で繰り返し検証することが可能になります。またMBSEは、社会の変化やステークホルダーのニーズを的確にとらえて、製品を取り巻くシステム全体を俯瞰して表現することで、最適な設計・開発を実現する手法です。MBDとMBSEを利用することで、複雑な船の設計でも迅速に最適化が図られるだけでなく、荷主・運航者をはじめとする幅広いステークホルダーが参加する協調的な開発プロセス「海事デジタルエンジニアリング」を創り出すことができるようになります。

「海事デジタルエンジニアリング」社会連携講座は東京大学大学院新領域創成科学研究科に設置され次世代のサステナブルな海上物流を構築するためのシミュレーション共通基盤(注4)の開発に取り組みます。海事分野のためのMBDとMBSEについて研究教育する拠点を、東京大学大学院工学系研究科をはじめそれら先進的なエンジニアリングの取り組みを進める国内外の他大学や研究機関、それらの活用で先行する自動車、宇宙・航空といった他産業の専門家とも幅広くネットワークを形成して、新技術の開発と社会実装、デジタルエンジニアリングを海事分野に適用する高度人材の育成を目指します。また洋上風力発電や海底資源開発など、海洋の産業利用を促進する分野への展開も期待されます。

講座概要

講座名称 海事デジタルエンジニアリング講座(英語名:Maritime and Ocean Digital Engineering laboratory、略称MODE)

設置期間 2022年10月1日から 2027年9月30日まで(5年間)

代表教員 村山英晶(東京大学大学院新領域創成科学研究科海洋技術環境学専攻 教授)

活動内容 海事産業におけるモデルベース開発手法およびシミュレーション共通基盤、脱炭素・自動運航船に関する技術および国際ルールについての研究、国際連携、人材育成

注1:社会連携講座 民間等外部の機関から受け入れる経費等を活用して設置される講座または研究部門
注2:Model-Based Development(MBD)。シミュレーションモデルを設計、開発で活用し、実物の試作や試験を通しての改良を大幅に減らすことでトータルの開発工数、工期を削減するための開発手法 ​   
注3:Model-Based Systems Engineering(MBSE)。システムが達成するべきゴールに基づき、オペレーションコンセプトを定め機能要件等を明らかにしシステムの設計、検証、およびそのマネジメントを行うシステムズエンジニアリングの手法のうち、特に、システムの記述にモデル化言語を活用する手法 
​注4: 令和4年7月20日 岸田内閣総理大臣へ手交された「総合海洋政策本部参与会議意見書」 ならびに「海洋産業の国際競争力強化に向けた共通基盤と人材育成検討プロジェクトチーム(PT)報告書

Member(2023年12月現在)

MODEは、日本郵船グループの株式会社MTIと、ジャパン マリンユナイテッド株式会社、三菱重工グループの三菱造船株式会社、古野電気株式会社、日本無線株式会社、BEMAC株式会社、一般財団法人日本海事協会(および子会社NAPA Ltd)の7社で、2022年10月1日に発足しました。また、2023年4月3日にJRCS株式会社、株式会社商船三井、株式会社新来島サノヤス造船、常石造船株式会社、寺崎電気産業株式会社、ナブテスコ株式会社の6社が新たに参画しました。2023年7月27日にダイハツディーゼル株式会社が新たに参画しました。

本講座ではサステナブルな海上物流を実現するシミュレーション共通基盤を構築し、デジタルエンジニアリングを活用した海事分野の技術開発と人材育成を推進していきます。国内外、業界問わず、志をともにする仲間を募集しています。